「そば」とは
「そば(蕎麦)」は穀物のソバの実を原料としたもので、日本農林規格(JAS)においては30%以上の蕎麦粉を用いた麵を蕎麦と言います。そばに含まれている蕎麦粉の割合によって蕎麦粉:小麦粉が80:20の二八蕎麦(にはちそば)、10:0の十割蕎麦(とわりそば・じゅうわりそば)などと呼ばれ親しまれています。ちなみに中華そば、焼きそば、沖縄のソーキ蕎麦も「そば」という名ですが、蕎麦粉を使わず小麦粉で作られています。


「そば」の歴史
蕎麦粉の麵で食べる風習は、16世紀末あるいは17世紀初頭に生まれたといわれています。蕎麦粉を練った蕎麦掻き(そばがき、蕎麦麦練りとも言う)と区別するために、麵のものは蕎麦切り(そばぎり)と呼ばれ、略して「そば」と言われるようになりました。
特に古くから寺院などで「寺方蕎麦」として蕎麦切りが作られ、茶席などで提供されたりした例は、江戸時代初期から文献に見られるようになっています。17世紀中期以降、蕎麦切りは江戸を中心に急速に普及し、各町内に一軒もしくは二軒の蕎麦屋があるのが普通で、日常的な食べ物として普及しました。
ヘルシーな「そば」物語
行者と呼ばれる人たちが「そば粉」を携えて、山中の清水でといで食べ、修行したといわれています。
日本最古の医学書「医心方」に「そばは、五臓の汚れたカスを洗い流して、精と神をつなぐ。その葉を煮て野菜として食することもでき、耳と目の働きを非常によくして、気を下げる」とあります。また民間療法として「そばの実を粥状にして食べると血圧を下げ、便秘を治す」とも言われています。
ルチンには毛細血管を強化する働きがあり、生活習慣病の予防にも効果があるといわれています。またダイエット効果や便秘予防などの面で注目されている食物繊維も含まれています。
ルチンや食物繊維以外にも白米の約2倍に相当するタンパク質が、そば粉100g中に約12gも含まれています。しかもそばのタンパク質は優良な性質を持ち、体に必要な必須アミノ酸に変化する割合が高いとも言われています。
このほかビタミンB1やB2、リノール酸なども豊富に含まれており、おいしく食べるだけで私たちのからだを健やかにしてくれる「そば」は「最強ヘルシー食品」と言えるでしょう。


「新そば」が旨い
「新そば」とは秋蒔きのそばで9月から11月に採れたものをその年のうちに食べる「秋新」と呼ばれるそばのことを言います。「秋新」に対し「夏新」と呼ばれるものもあり、これは6月中旬から8月中旬に収穫されるものを指します。
「夏新」より「秋新」のほうが味・香りが良いため、あえて秋新だけが「新そば」と呼ばれています。収穫されたばかりの「新そば」の味わい深い香りは、この時期だけのよろこびとも言えるでしょう。
「そば湯」はただ者ではない
そば湯を飲む習慣は信州から江戸に広まったといわれています。そばはもともとバランスの取れた栄養食であり、なかでもそば粉に含まれる植物性タンパク質は大変良質なことで知られています。しかし、タンパク質は水に溶けやすく、その半分近くがそばをゆがくとき、ゆで汁に流れ出てしまっているのです。「そば湯」は栄養をムダにしないよう、口にしたのが始まり。そば湯のタンパク質は二日酔いに大変効果があり、高血圧による血栓予防が期待されるルチン、ビタミン、ミネラルも多量に含まれています。
江戸っ子がそばと一緒に酒を飲み、最後にそば湯でしめくくるのはこの由縁です。


「引っ越しそば」は何で配る?
引越しした時にご近所への挨拶としてそばを配るようになったのは江戸時代中期、江戸の町人文化が始まりです。
それ以前は小豆を使った粥やお餅を配っていたそうですが、そばの携帯から「遅く長くお付き合いを」といった掛け合いは後からつけられたようで、本当は安くてうまくて喜ばれることが第一だったようですよ。